K先生の引き継ぎで、民間企業の研修用ビデオを作成。「学校図書館とICT」をテーマに喋ってくれとの依頼。依頼元の図書館流通センター(TRC)には数年在籍していたことがあり、まさか何年もあとに仕事の依頼を受けるとは思ってもみなかった。TRCに勤めてて、視聴する機会のある方はどうぞよろしくお願いします。

 テーマは「学校図書館とICT」。K先生が数年前につくった教材を元に、新しくデータを加えたり、この数年でやってきた勤務校の実践なども加えつつ再集録。編集まで自分で行った。

 学校図書館とICTとはいいつつ、実際にTRCスタッフが派遣される先の学校でどれだけICT環境が整っているかはわからない。加えて基本的に民間企業の派遣業務なので、スタッフがどれだけ学校のICT環境を使えるかもわからない。というわけで、現在の「一般的な」学校ICT環境を整理して解説しつつ、「本校の場合は…」という語り口のビデオにした。

参考にしたのは以下の文科省資料を中心に。

 ・デジタル学習基盤に係る現状と課題の整理(案)令和6年9月30日
 ・令和6年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)
(令和7年3月1日)
 ・令和6年度 子供の読書活動の推進等に関する調査研究 電子図書館・電子書籍と
子供の読書活動推進に関する実態調査(令和7年3月)

 こうしてみると、2020年以前からあった「GIGAスクール構想」がのコロナ禍によって前倒しされ、たった1〜2年という驚きのスピードで学校のICT整備が完了、人も充足(そうでない自治体もあるけど)していったことがわかる。2023年3月で小・中学校は1人1台、2024年に高校が1人1台に。「個別最適な学び」「協働的な学び」の題目のもと、インフラは整ったわけだ。

 ただ、それでICT活用ができているか、教育の何かが変わったのかというとそれも「わからない」。 端末活用率の自治体間格差は大きい(週3日以上、約7割~10割)。児童生徒のタイピング能力は依然として1分間あたり15.8文字に留まる。端末は何かを「見る」に特化し、何かを「生みだす」には乏しい状況。多くの学校の探究学習の成果物を見ればわかるが、児童生徒も(大人も)相変わらずのメディアリテラシーだ。

 「先輩」たちのアナログ回帰もある。 参考にして持ち上げてきたフィンランドは、紙の教科書・紙のプリントとペンへ揺り戻しが起こっている。集中力低下、読解力低下なども調査結果で明らかに。PISA1位のシンガポールでは小学生に端末を配布しないことを決定…

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20250317-OYT1T50203

 まぁせやろなという感じがある。ICT導入したからってなんなんだ?という問いは正直ずっとある。人間の認知能力は紙とペンの時代からそれほど変化しないわけで。何のためにICT導入して活用させるのかという点は、当たり前だけどちゃんと考えておきたい。検証がすぐひっくり返るような、安易な能力主義じゃダメだろうなぁ。

 おまけに今回困ったのが、「学校図書館スタッフの端末配備状況」が不明だったこと。教員用コンピュータの整備率は統計があるものの、例えば司書のそれは見つからない。

 いつもの「学校図書館は空気」状態。LMSのアカウントが司書にも付与されている学校は話には聞くが、それもおそらく雇用形態によるのだろう。自治体や私学の専任ならまだしも、非常勤がどうなっているのかはわからない。Classroomでのお知らせなど、色々展開は考えられるが。さすがに管理システムは80%近いが(特別支援は…)。

 残りはいつものネタ。中学卒論を中心に学校のICT環境や図書館との関連を紹介していった。うちにとっては、ICT環境と図書館は両輪。子どもが興味を学ぶからこそ、どっちも重要になる。アナログもICTもどっちも組泡褪せざるをえない、という感じ。

 こうしてみると、「 ICTで何か大きく変わった」というよりも、「便利なツールが増えただけ」と考えるのが妥当だろう。別に図書館が無いと探究はできないけど、ICTが無くても探究はできる。ツールをどう使うかを考えればいいだけ。生徒の興味関心と、図書の資料と、ICTが組み合わさって効果を発揮する。ただしICTは授業の工夫がなければ「メンドクサイ課題やっつけマシン」になる。結局は授業づくりの話になる。

 今回の登壇テーマとは異なるけど、学校ICT環境整備のスピード感や予算配分をみていると、学校図書館環境整備とどうしても比べてしまう。優遇不遇の差が大きい。ICT環境はコロナ禍の影響が大きかったわけだが、じゃあ「何が起これば学校図書館の充実へ舵が切られるのだろう」という問いをどうしても考えてしまった。探究学習の機運醸成がそのきっかけとなるはずだったが、残念ながら既に学校図書館業界はその機会を逃してしまったようにも思う。